最初に誤解を恐れずに言えば〈キングセイコー〉の時計は「おじさんっぽい」と思います。それは針、インデックス、文字盤、ブレスレットといった総じてブランドの年輪を感じる佇まいから起因するものだと感じます。
ただ、そうして安易に選択肢から外してしまうことにいささかもったいなさを感じるのは、どこかで〈キング セイコー〉を信頼しているからなのかもしれません。
KING SEIKO / キングセイコー
SDKS003(SDKS003)
¥198,000
〈キングセイコー〉がどんな立ち位置でどんな出自だったかと言うと、過去に展開していた年数はとても短く約14年の間しか販売されていませんでした。時を同じくして発表された〈グランドセイコー〉が〈セイコー〉の最高級品という位置づけだったのに対し、〈キングセイコー〉はあくまで一般向けの商品であり、雲の上の存在ではなかった、というのが違いです。見た目は似ているのですが、ターゲットが違っていたということになります。
つまり、自分のような一般市民でも頑張れば手が届く存在だったのです。
話を元に戻して、このクラシカルな時計をどう調理すれば自分の腕元に収まるのだろうと考えました。
〈キングセイコー〉を身につける人物像は、50歳オーバーで仕事で過不足なく使え、かつ所有欲も満たしてくれるものが欲しい人、といったペルソナが仮定されるのですが、思えば腕時計に年齢や職業は実際のところ関係ありません。20代がしてもいいですし、ヘインズのTシャツとリーバイスのジーンズに〈キングセイコー〉をしていたっていいわけです。
「コレを持つにふさわしい人間」を掲げるほど、背伸びをした時計ではないからです。
2022年現在、三針、ノンデイト、アンダー40ミリなど、シンプリシティを極めたかのような時計の需要が伸びていく中、急速に射程範囲に収まってきたのが〈キングセイコー〉の存在です。「アンティーク」とも形容できるほど時代を飛び越えてきたかのようなルックスは、そうして見ればなんだか「おじさんっぽい」のではなく「かわいらしい」存在に見えてきました。
逆にビシッとスーツに合わせたらこれほど理解のある相棒もなかなかいません。
誰にも気づかれることなく、そっとスタイルを支えてくれる存在ですし、逆にトレンド感のあるファッションに落とし込めば良い違和感を与えてくれます。筆者のようにこの時計とのジェネレーションギャップがある人間にとってみると、メジャーでゴージャスで「誰から見てもいい時計」に比べて、シックで目立ちすぎない腕時計はいちいち人の目を気にすることがなくて居心地が良いとさえ感じることができます。
ステンレスブレスレットと同系統に見せるヘアライン仕上げの文字盤が全体を統制して、シルバーアクセサリーのように見えるSDKS003。「オンオフ問わない」とはまさにこのことであり、これなら昼間のスターバックスでも真夜中のパークハイアットも自在にアクセスできそうです。
KING SEIKO / キングセイコー
SDKS003(SDKS003)
¥198,000