【追記】
こちらの商品は販売終了しています。
後継機のSBGW301、SBGW305に特性が引き継がれていますので、それらの参考にしてください。
〈グランドセイコー〉の隠れた名品にSBGW231があります。〈グランドセイコー〉と言えばSLGH005(通称:白樺)に代表されるメカニカルハイビート&コンセプチュアルな文字盤デザインのモデルが注目されます。当店でも非常に高い人気を誇るモデルですが、実は一方でエレガンスコレクションのSBGW231は隠れたヒット作。
〈グランドセイコー〉の数ある名品の中でも、ユーザーから度々「完璧な一本」と評される時計です。
Grand Seiko / グランドセイコー
SBGW231
¥550,000
三針、ノンデイト、手巻、蓄光もなく数字もないバーインデックス、といったプリミティブな時計の構造を成したモデルで、言ってみればこれ以上ないほどにシンプルを極めたデザイン。裏を返せば腕時計の究極形態とも言える名品です。
SBGW231は2017年に発表された比較的新しいモデルです。半世紀は経っていそうな普遍的な顔つきで、どの時代においても古典を感じる永久不滅な存在感。仮に30歳で手にしたとして死ぬまで使えると考えれば50年、60年と平気で耐えるデザインです。
時計をこよなく愛する嗜好者にとって、時計の巻き上げを日々のルーティンにすることはそう難しくありませんが、忙しなく過ごす人にとって朝の1分はとても貴重です。搭載しているキャリバー9S64は72時間のロングパワーリザーブですから平日なら1〜2回巻けば良く、週末に使うなら日曜日が終わるまで止まることなく働いてくれます。
手巻きが故に軽くて薄い61g。さらにMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を用いたパーツ加工を行うことで実現した超高精度と耐久性。少し小ぶりで取り回しの良い37.3mmのケースサイズですが、さりげなく曲げ針を採用し、ただでさえ見やすい文字盤にさらに判読性まで加わり隙のない一本に仕上がっています。
ケースをもっと良く見てみるとどこにも角がなく、緩やかな曲線で構成されていることが分かります。ラグ(かん足)も手首に沿うように曲げられ、ドレスウォッチ然としたザラツ研磨による美しい鏡面仕上げが行われています。
毎日使うにも申し分ない時計ですが、土曜日の遅く起きた朝、ゆっくりコーヒーを飲みながら巻き上げて使うのが似合う時計でもあります。フォーマルなドレスコードが要求される冠婚葬祭のような「いざ」という時の最高の相棒にもなります。
こうして考えるとルックスはビジネスマンに対応し、フォーマルシーンに対応し、休日にも対応し、実用性で言うならトップクラスの一本。ツールウォッチではないので〈オメガ〉シーマスターのような高い防水性や〈カシオ〉G-SHOCKのようなタフネスは期待できませんが、そういう場面では出番がない時計ですから必要十分。
決定打となるSBGW231の良さとは具体的に何か、と問われると「これ以上引けないほどシンプルだけど、だからこそ本気で選ぶに相応しい時計」であることです。挑戦的な時計に50万円出すのは勇気が要りますが、自分にとっての絶対的なベーシックにはお金を惜しむ必要がありません(もちろん生活をふいにしてはいけませんが)。そういう意味で、ここまで削ぎきっていながら細部は作り込まれているSBGW231は所有する価値が高いです。
また、個人的に感じるツボは異常なまでにつややかなザラツ研磨のケースに対して、ダイヤルはマットな乳白色であるコントラスト。サテンともラッカーとも違う〈グランドセイコー〉ならではの表情で、漆喰や珪藻土と共通性を感じるナチュラルな風合いがたまりません。
毎日仕事で使うものは「道具」として使う他の時計に任せて、週末はさりげないアクセサリーのように付き合うSBGW231を相棒にすれば、週末が来るのがきっともっと楽しみになるはずです。
(スタッフ私物)
【購入の経緯】
前モデルのSBGW031を2015年に購入しましたが、〈グランドセイコー〉でもハイビート機やスポーツウォッチなどにも心惹かれ一度手放してしまいました。2023年になり、価格改定をきっかけに文字盤上のロゴ等が多少は違えど後継機にあたるSBGW231を再度購入しました。
30代になってから友人の結婚式に参加した際、時計の販売員でありながら畏まった場に似合う、ドレスウォッチと言える時計が手元に無いということに遅まきながら気づいてしまい、30代から老後までも似合うようなシンプルな時計を購入しようと思い立ち3つの条件に絞って選びました。
「これ見よがしでないブランド」
「ノンデイトで冠婚葬祭の服装にも馴染むデザイン」
「ランニングコストが多大にならないムーブメント」
ボックス型サファイアガラスや、37mmという小径サイズがクラシカルでタイムレスな雰囲気です。ノンデイトの手巻なので運動量が少なくなります。日付管理も必要なくなるであろう老後でも十分ではないでしょうか。販売員から見ても、この価格でこれだけの作り込みはあまりありません。
【使用した感想】
ブラックのクロコダイルストラップは普段使いには少し畏まった感が強くなるので、SBGW235用の純正SSブレスレットに換装してあります。レトロな雰囲気のブレスレットになることでカジュアルダウンした服装にもより一層馴染んでくれます。
自動巻ベースの手巻ムーブメントであることから、完全に巻き上がった状態でもリューズを巻き上げる事ができ、一般的な手巻と違い誤って巻き過ぎてゼンマイを切る心配が無いので、物怖じせず気楽に巻き上げられます。
自動巻と違い、手巻はゼンマイを巻き上げるローターが無いので、裏スケのムーブメントの鑑賞に向いています。あくまで〈グランドセイコー〉の量産ムーブメントであり、それほどの高級機ではないので細部の仕上げは上位モデルには敵わないところもありますが、それでも青焼きしたネジやブリッジの仕上げ、シースルーバックのサファイアガラスにプリントされた獅子の紋章など、見ごたえは十分にあります。
【精度について】
スイス公認クロノメーター(C.O.S.C.)より厳しく精度が管理されている「新GS規格」に則った精度検査が行われており、自分自身それほど機械式時計の精度の頓着が無いというのもあるんですが、携帯精度※に不満はありませんが、使用すると少し遅れ傾向、保管時に文字盤上にして進み傾向が見られ、使用と保管で精度誤差が相殺されているところが少し残念です。最初に買ったSBGW031も購入直後は精度のばらつき、やや遅れ傾向が見られたので、実際に購入した方は半年から一年程度使用し、ムーブメントが十分に馴染んだタイミングで気になるようなら精度調整にてメーカーへ依頼しても良いかもしれません。そもそも量産ミドルクラスの機械式時計なので、それほどシビアに精度を求めなくともいいとは思います。
※携帯精度…気温5℃~35℃で1日最低8時間以上着用時の腕時計の精度。